2013年11月20日水曜日

若旦那

みすぼらしい身なりをした男が、雑草をちぎっては食べ、ちぎっては食べしているところに、ある大店の若旦那が通りかかった。
男の様子を見て不思議に思った若旦那は声をかけた。
「なんでお前さんは草なんか食べているんだい?」
「見てのとおり、ひもじいからでさぁ」
「なるほどわかった。それなら、我が家においで」
「家には連れ合いと五人の子供もいるんですが」
「そいつは好都合。みんなでおいで」

男の家により妻子を連れて若旦那の家へ向かう。
「おありがとうございます。だが、ほんとうにこんなに大勢で押しかけても大丈夫なもんでございましょうか?」
「いやいや大勢の方がありがたい。ちょうど奉公人がやめたところで、うちの庭は草が伸び放題になってるんだ」